Case #028: 前十字靭帯断裂の犬 ラテラルスーチャー法 アイソメトリックポイントT3について |日野どうぶつ病院|1

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Case #028: 前十字靭帯断裂の犬 ラテラルスーチャー法 アイソメトリックポイントT3について

この症例は今年に入ってすぐ、跛行があるということで来院されました。体重は約9kgでBCS7/9ぐらいです。

ラテラルスーチャー法(関節外法)は何種類も手術法が報告されていますが、昨年の3月頃に私が参加した実習ではArthrex社のSwiveLock Anchor systemを用いた方法とCorkscrew Anchor systemを用いた方法を学んできました。Arthrex社からは、他にMini-TightRope systemなども販売されており、それぞれの手法を行いやすいように針と糸、アンカーなどが揃っています。詳細は長くなりすぎるので割愛します。

この実習に参加した際、この関節外法を行う為の非常に重要なポイントを学びました。こちらの報告を元にしているようでした。

 前十字靭帯というのは大腿骨と脛骨にくっついていてますが、切れてしまうと脛骨が前(頭側)に移動してしまい、膝関節が非常に不安定になってしまいます。靭帯を元通りに再建できればいいのですが、犬ではそれが非常に難しいようです。なので、その靭帯に変わる強力な糸をもとの靭帯とは違う場所につけて安定化させたいというのがラテラルスーチャー法(関節外法)なのですが、大腿骨と脛骨のどことどこを糸で固定すれば良いのか今まで曖昧でした。この糸を固定するポイントがイマイチだと、膝の屈伸運動をした際に、糸がたるんだり緊張したりして、不具合がでてしまいます。その距離が変わらない場所=等長点(アイソメトリックポイント)は大腿骨と脛骨のどことどこなのかというのを調べたのがこの報告です。

(写真は一部)

F1か2とT1か2か3をつないで、負荷の具合を調べています。

(グラフは一部)

この中で、一番負荷の変化が無いのが、F1か2かというよりT3を選んでいるということが一目瞭然です。原著を見ていただくと他の組み合わせものっています。 

TightRope法では、大腿骨のF2付近から大腿骨内側に向かって穴をあけ、ボタンに引っ掛けて持ってくる方法をとっています。

アンカー法では、F2付近に穴をあけ、頭に穴が空いた少し大きめのスクリューににたアンカーに固定します。

TPLOやTTAといった骨切り法、TightRopeやアンカーといった関節外法など、様々な方法が行われているというのは、まだ治療としても病因論としても結論に至っていない証拠でもあります。

私がとっている手法は、T3から内側に下穴を開けておき、種子骨に糸をまわし込んで、T3を通して内側に糸を持っていき、ボタンに引っ掛けて、T3に戻し結紮をするという方法です。

 左側の足が関節外法で行った足。全体は移っていませんが、脛骨の位置は問題ないように見えます。大腿骨がローリングしていますが、位置関係にそんなに違和感はありません。

 内側にボタンがありますが、外側にあるT3というポイントから穴をあけ、ボタンを通してから、外側に戻してあります。

このオペを行ったのはH30年1月で、最近はほとんど違和感のない足の使い方をしてくれていたのですが、実はラテラル像を見ての通り、今度は左側の前十字靭帯が断裂してしまったのです。

<続く>

 

 
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