Case #017: 歯周病により上顎犬歯抜歯後、下顎犬歯による口唇への傷害をなくす為に下顎犬歯の歯冠切断および抜髄根充をした猫 |日野どうぶつ病院|1

blog

Case #017: 歯周病により上顎犬歯抜歯後、下顎犬歯による口唇への傷害をなくす為に下顎犬歯の歯冠切断および抜髄根充をした猫

長〜い、題名になってしまいました。(汗)

こういうことはよくあるのですが、どれくらい深刻になるのか、また動物や飼主さんがどれくらい気にするのかはさまざまであり、またメインの歯周病の治療により長時間かかってしまうと、そこまで治療するとトータルの麻酔時間が長くなりすぎるということもあるので、必要に応じてとしています。

 今回は約6歳の避妊済雌猫ちゃんで、結果的に重い歯周病でほとんどの歯を抜くことになってしまったのですが、下顎犬歯はやや提出が見られます(黄色っぽい歯根:セメント質が見えています)が良好な状態だったので残しました。すると、上顎の口唇に下顎犬歯があたってしまい、頻繁に口を開閉していてとても気になっているとのことで、オペの2週後ぐらいにご相談がありました。最初のオペ前のカウンセリングでこのような合併症のお話しはしてありましたので、スムーズに2度目のオペということになりました。

#15のK-fileから初めて、#35まで広げます。

水酸化カルシウムペーストを充填し、ガッタパーチャを詰め、 グラスアイオノマー、レジンで修復します。

 反対側も同様に処理します。

歯内治療には、生活歯髄切断法という治療があります。この治療は、使用する薬剤によって、成功率が大幅に変わってしまいます。報告では、よく使われる水酸化カルシウムでは56%、MTAでは92%という成功率の違いがあります。MTAによる治療は、H30.6.15現在 、まだ勉強中で当院ではまだ導入できていません。MTAの取扱がちょっと難しいようで・・・。そういう背景がある為、手間ですが抜髄根充という方法で、このようなケースは治療をしています。

破折などで失活している場合、汚染した象牙質をファイルで削り出すということも必要ですが、今回のようなケースでは感染は起きていませんので、たくさん削る必要もなく処理時間はそんなにかかりません。

上顎の犬歯は、獲物を捕獲するというのが最も大きな機能ですが、口唇を外側に広げるという働きもあり、上顎犬歯を失うとこのような事態に陥ることがあります。また、片側の下顎切除を行うと、残った側の顎が中央よりになってしまい、下顎犬歯が口蓋に接してしまうこともあります。そういう場合でも、下顎犬歯の歯冠切断をして、動物を快適にしてあげたいですね。

 
TOP