Case #048: 高齢猫ちゃん(19歳)の歯石除去 |日野どうぶつ病院|1

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Case #048: 高齢猫ちゃん(19歳)の歯石除去

 

内容的には、特にこれというトピックスはないですが、今回の症例は19歳の高齢猫ちゃんの症例です。

先月終わり頃、数年ぶりに診察に見えました。歯が抜けたとのことで、歯石を取ってもらいたいとのことでした。少し以前より痩せていました。歯を持参されており、見てみたら、右下顎第1後臼歯でした。口の中を見ると左右上顎第4前臼歯に中〜重度の歯石が見られました。

血液検査で、血球計算と生化学、年齢からして甲状腺も外せません。BUNが36と、軽度の腎障害が疑われました。食べることには不自由はないとのことでしたので、ひとまず、点滴を週2くらいできてもらい、体調を見させてもらい、約3週後に歯科手術をすることになりました。歯が抜けるというのも歯周病ばかりとは限らず、この年齢だと扁平上皮癌という猫に多い腫瘍も視野に入れる必要があります。この程度の期間観察をすれば、必ず元気食欲の低下など、単なる歯周病ではないだろうという予想もつきます。

あと、処置前に飼い主さんのご希望も伺っておきます。通常のようにすべての歯肉溝深さを測定し、レントゲンを撮り、それから歯石除去以外のことも実施を検討するのかどうか。ただ、そうするとどうしても20分なり時間が余計にかかってしまいます。飼い主さんは、そうしたことは希望されず、歯石除去だけをして欲しいとのことでした。時短優先で、割り切って、やることを限定するのは悪いことではないです。希望されることをやって、もし、改善がなければまた検討すればいいのです。

当日早めの時間にお預かりしルート確保をし、晶質液を3ml/kg/hrで流し、そこにドパミン3ガンマで流し、術前の準備をしておきます。

さぁ、それでは処置を始めます。

右側ですが、こんな感じです。下顎一番奥の歯(409)が抜けていますからありません。108の歯石は結構多いですよね。

歯石を取るとこんな感じ。

わかりにくいですが、下顎第3前臼歯の形が小さいです。吸収病巣でしょう。 また、超音波スケーラーで歯石を取っているとき、何本かの歯でチャタリングが見られました。

 正面です。全て歯は残っていて、この年齢でよくある犬歯の提出もないです。一言で言えば、驚異的にいい状態ですね。

左側です。

かなり良い状態だと思います。こちら側も歯石除去をしているとき、チャタリングが見られました。研磨剤を塗布して研磨をし、歯茎のところに抗生剤軟膏の塗布だけして終了とし、当日帰宅しました。麻酔時間は20分ほどです。抗生剤や鎮痛剤の投与はありません。

翌日の電話での様子伺いでは、ドライフードをカリカリ食べて元気食欲の様子は変化ないとのことでした。念のためにオペ2日後に皮下点滴を実施しましたが、そのときの様子は問題ありませんでした。

歯肉溝深さの測定もレントゲン検査もしていませんので正確に評価はできていませんから、十分な歯科治療とはいえません。でも、 この年齢では欲張りすぎてはいけないでしょう。

 
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