Case #082: もうすぐ5歳になるチワワの歯科処置。軽度の高尿素窒素血症(BUN: 37mg/dl、シスタチンC:0.22ml/L) |日野どうぶつ病院|1

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Case #082: もうすぐ5歳になるチワワの歯科処置。軽度の高尿素窒素血症(BUN: 37mg/dl、シスタチンC:0.22ml/L)

とても真面目な飼い主さんで、2匹のチワワを連れてみえました。2年くらい前からの口臭と、半年くらい前からの歯石がきになるという主訴で来院しました。避妊済みメスのチワワ、もうすぐ5歳で体重は2.15kgです。

この春から始まった歯科専門外来が少しずつ定着してきている印象で、それまではかなり重い状態の動物の来院が多かったのですが、最近はそこまでひどくない印象の動物の来院が徐々に増えています。酷くない印象というのは、あくまで見える部分=歯冠の状態がどうかというだけであって、歯周病が重いか軽いかということとはほとんど関連がないことを私たちは知らなければなりません。

歯科専門外来に初めて来院された時の状態はこのような感じです。

欠歯が何カ所かあり、 付いている歯石の量は中等度です。

若干、左側の方が歯石は少ないかな。

正面の写真では、舌が切歯にかぶってしまいわかりにくかったので載せていませんが、咬合は、おそらくクラス4の不正咬合、いわゆるWryバイトです。

術前方針としては、麻酔後、まず歯石除去、歯肉溝の深さ(PPD)の測定、口腔内レントゲンの撮影により、口腔内全体の状態を把握した上で治療計画を立案し、同日、必要な処置をするということになりました。歯ブラシによる歯磨き指導もさせていただきました。

そして、本日全身麻酔下で処置を行いました。前回以降、歯磨きがしやすくなったとの嬉しいお知らせもいただきました。

さて、治療前のレントゲンはこんな感じです。

 全体が写っているので詳細は分かりにくいかもしれませんが、一番重いところをアップにしたものを載せますね。

これは右上顎の奥歯の部分のレントゲンです。

 右が処置前、左が処置後になります。

歯の根っこの先の周囲が、ぽっかり丸く黒くなっているのが分かりますね?重度の歯周病になっており、検査時では最も深いPPDは7mm、動揺(+++)でした。歯石が多いことは分かりましたが、ここまで重度だとは私も想像できませんでした。プロービングとレントゲン検査の大事さを再認識ですね。

覚醒状態での咬合状態をうまく写真に撮れなかったので、挿管後ですが載せておきますね。

上下顎の水平ラインが平行ではないので、4つのアーチの長さが異なっている可能性があります。

207, 写っていませんが310の外科的抜歯と309遠心根のルートプレーニングを実施。

109, 110を外科的抜歯。この後で103はエレベータにより抜歯。

 そして408の外科的抜歯をし、

 4-0Monocrylにて、単純結紮縫合にて閉創。

抜歯後のレントゲンです。

マーカインの局所麻酔により、術中も大きな心拍や呼吸の乱れもなく無難に終了しました。術前からの点滴、術中はシスタチンCは正常値でしたが、軽度の高BUNが気になったので、ドパミンを腎血流量を増やす量でCRIしながら行いました。

今回のように、比較的若い動物でも、部分的に重度の歯周病を持っていることは珍しくありません。それが、上顎第4前臼歯や下顎第1後臼歯という犬猫では最も重要な機能歯に隣接して起こっていることは珍しくなく、一見重くない印象であっても、口腔内検査を受ける重要性がよくわかるケースでした。

お疲れ様でした〜〜〜

 
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