Case #068: AO分類1-3-A1 若い猫 BW5.50kg 左上腕骨遠位斜骨折 |日野どうぶつ病院|1

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Case #068: AO分類1-3-A1 若い猫 BW5.50kg 左上腕骨遠位斜骨折

諸事情あって、昨日当院に紹介されてきた猫ちゃん。

こんな感じで、左上腕骨遠位1/3の斜骨折。第3骨片があるので、解剖学的整復ができるか微妙なところです。

術前計画は、このような感じ。

注意しなければならないのは、2歳未満ということ、体重が5.50kg(BCS7/9)ということで、 強固な固定が必要という点かと思います。

 筋間を鈍性に剥離し、骨折端を露出します。

 予定通り、径1.25mmのキルシュナーワイヤーを髄内ピンとして刺入し、アライメントを整えます。

 骨折端を合わせ、テコの原理で、遠位骨片に髄内ピンを入れてゆきます。

 術前レントゲンでは、近位骨片に亀裂らしいラインが認められたので慎重に進めす。

猫のコツは、固く脆い。猫の歯根も同様です。非常に取り扱いは難しいです。

骨折後、縮こまった筋をじっくりと、焦らず、伸びるのを待つ。指先の感覚を頼りに、今以上に複雑な骨折を起こさないように時間をかけ進めます。

1.5mmロッキングのプレートを2枚。ダブルプレートでより強固な固定を目指すことにしました。

 患者の体重、年齢、行動性。様々な要素を考慮します。

従来のコンベンショナルな内固定材料以外に、ロッキングインプラントが加わったことで、非常にバラエティに富む固定様式がチョイスできます。教科書通りでは、固体にふさわしい固定材料の選択は、現在ではかえって困難だと思います。

 遠位の固定状況。

 近位の固定状況。

一本のスクリューが髄内ピンにあたって、きっちり止めることができなかったので、コンベンショナルスクリューに変え、きっちりと固定できました。

3-0丸針Coated Vicryl にて、単純結紮縫合にて閉創します。

 術後のレントゲンです。

径1.25mmK-wire2本を髄内ピンとして設置。

1.5mmリコンストラクションのロッキングプレートをダブルプレートで補強。

遠位骨片には、2X2で4本のロッキングスクリューが入っています。

近位骨片は、ロッキングスクリュー5本とコンベンショナル1本の計6本で固定。

応力が骨折部に集中しないように、できるだけプレートの端っこにスクリューを集めます。

術前確認した遊離骨片は、猫に特有の滑車上孔の骨片が吹っ飛んでしまったのでしょう。もしかしたら、神経障害が残るかもしれませんが、これは受傷時の問題なので、致し方ないところです。

年越しに向けてできるだけオペを入れないようにしていますが、往往にしてやんごとなき患者さんが来られることがあります。本症例は、受傷後しばらく時間が経っていて、部位的にも難易度の高い症例だったと思いますが、今の私において100%を出し切ることができました。これで治らない場合は・・・。また考えます。

明日もオペは入っていますが、なんとか頑張りたいです。

頑張ってついてきてくれたスタッフに感謝。

では、皆様、良い年をお迎えください。

また来年、よろしくお願いいたします。

院長 津田 卓二

 
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