Case #041: 高齢猫の眼窩下膿瘍
2019.02.14 歯科
昨年秋に知人の病院からご紹介いただき、その後ちょくちょく診させて頂いていました。
歯石がひどいということで受診されたのですが、甲状腺機能亢進症(T4:13.4)、腎機能低下(BUN: 41)、肝酵素上昇(ALT, ALP)、レントゲンでは肝臓の高度の腫大があり、甲状腺機能亢進症の薬を処方するとともに、一旦は大学病院を紹介させて頂きました。幾らか調子が良かったのですが、1月下旬に左眼の下から膿がでているとの事で、再度受診されました。
口の中が気になって仕方ないとのことでした。リスクが高いものの、なんとかしてあげたいという飼主さんのお気持ちが強く、検査と手術をすることに。通常、スクリーニングで全ての歯のプロービングとレントゲンを行いますが、今回は時短優先で、患部のみを行う事にしました。
左上顎第4前臼歯(208)が丸っと歯石におおわれている感じでした。グラグラしていたので、鉗子でつまんで取り除きましたが・・・、
その下にさらに大きな歯石が!
レントゲンでも大きな歯石の影がうつっています。
これをダイヤモンドバーなどで削って取り除きました。
しかし、最初のレントゲンから気になっていたのが、プローブの延長線上にあるちょっとした白い影と、そのまわりの骨の透過性亢進。
時に口蓋についた歯石がレントゲン上に写る事もあるので、念のためにチェックしましたが、やはりなし。眼窩下膿瘍の原因が巨大な歯石ではなくこの白い影のせいかも・・・。
しかし、深追いは禁物です。ここまでで25分ほど経過していて、少し血圧も下がってきました。巨大歯石が負担になっていた事は確かだと思われたので、一旦これで治療を終了しました。覚醒までの短い時間で、他の歯の歯石除去とグラグラしていた103の抜歯をささっと行い、トータル30分ほどで終了。
もしかしたら、眼窩下膿瘍は再発するかもしれない事や除去する場合はまずCTを撮る必要がある事を飼主さんにお伝えし、割と元気にその日に退院しました。
翌日から何日か通院での皮下点滴や、鎮痛剤の内服の為に来院してもらいました。電話での様子伺いでは、もう口を気にする仕草は無くなったとの事で、飼主さんも喜んでおられました。
しかし・・・、約10日後。やっぱり眼窩下膿瘍が再発したとの事で、来院されました。歯石除去の治療だけでは完治しなかったようです。ひとまず2週間ほど効く抗生剤の注射をしました。数日後の様子伺いの電話では、眼窩下膿瘍はおさまっているとのことでした。