Case #079: 右側口唇と口腔粘膜の重度損傷を認めた猫ちゃん |日野どうぶつ病院|1

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Case #079: 右側口唇と口腔粘膜の重度損傷を認めた猫ちゃん

 
早いもので、新型コロナで始まった令和2年も、すでに半年が終わろうとしています。

2017-2018年で、自分自身の歯科の勉強の仕上げをするために参加したImprove Internationalの獣医歯科コースの頃から巻き始めた種が徐々に収穫の時を迎えてきる気がします。今月は、避妊去勢手術は一つも入ることなく終わりそう。春から始めた歯科の特別診療は、私たち自身もじっくりと症例に向き合うことができ、思い切って導入してよかったと感じています。今月は、歯科と整形のオペだけです。

とても忙しかったこの6月。なかなか症例をアップできずにいましたが、非常に難しい症例がいます。先月終わり頃から来始めた保護猫ちゃんです。年齢不明、原因不明で、最初は極度の衰弱で命も危うい状態でした。保護猫ちゃんということで、抗生剤と皮下点滴でしばらく様子を見ていました。

最初はこんな感じです。

右側の口唇はなく、上顎骨が露出し壊死しているように見えます。右側下顎も損傷があります。上下顎となると、おそらく腫瘍性ではないでしょう。外で生活していたので、猫か野生動物に噛まれたのかなぁ・・・?

 左側は異常ありません。

3週ほど経ち、食欲元気も安定し、体格も十分です。

口の状態は自然治癒で徐々に改善してきましたが、そろそろ限界でしょう。しかし、よくここまで口唇も戻ってきました。口唇を塞ぐことはできそうですが、ただ、口唇を塞げばそれで終わりではないですよね。問題は口腔粘膜の損傷です。

血液検査をしたところ、やや腎臓系の数値は上限を上回っていましたが、オペはできそうです。食べたフードがポロポロこぼれるため、口唇を作ってあげたいですが、治療計画としては、まず、口の中の状態を良くするのが先決です。下顎は何とかなると思いますが、問題は上顎です。これだけ傷んでいると欠損は相当のものです。

粘膜をめくると、ほとんど歯根は見えています。 

 抜歯しましたが、やはり粘膜は足りません。ひとまず、上顎は置いといて、下顎を先に済ませることにしました。

下顎も同様で、しにくを剥がすと歯根が見えます。

 臼歯を抜歯して、

 単純結紮縫合にて閉創し、下顎犬歯の抜歯をします。

 そして、上顎に戻り、口蓋粘膜を剥がします。

 口蓋動脈を2箇所で結紮し切断し、吻側から剥離します。

側方転位して、ほとんどない頬側粘膜と縫合し、口腔粘膜の閉鎖を試み、口蓋は二次癒合を待つこととしました。

やはりこういうケースでは食道チューブを設置するのが無難でしょうね。

 12frの栄養チューブを設置します。このぐらいの太さになるとa/d2に水1ぐらいの割合でゆるくしてもらって、50ccのチューブフィーディングようシリンジで入れてあげることができます。

数日経って、経過観察をしました。

 口唇に血液の付着はありますが、体重の減少は50gと僅かでした。口蓋の状態がわかりますか?

飼い主さんも頑張って給餌していますので、なんとか頑張って乗り越えてもらいたいです。

 
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