Case #038: 口鼻腔瘻の猫 |日野どうぶつ病院|1

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Case #038: 口鼻腔瘻の猫

 

H31/1/7(月)

新年あけましておめでとうございます

本年もどうぞよろしく御願い致します

12/30午後から1/3までお休みを頂きましたが、諸事情あって、ほとんどの日をあっちへ行ったりこっちへきたりの車での移動で、元日のみ実家でのんびりさせて頂きました。

年末、駆け込みでオペの依頼がありましたが、第2週以降に予約させて頂き、今日がオペ初日です。

ご紹介いただいた、7〜8歳くらいの元保護猫ちゃんです。

左上顎に口鼻腔瘻があるとの事でした。右も時に鼻提灯が膨らんでしまうので、右上顎歯列も要チェックです。

肉眼所見はこんな感じです。原因はおそらく歯周病だと思われました。

 初診時4.50kgで、年が明けて本日は4.80kgでした。もし腫瘍性の病変であれば、見た目も潰瘍ができていたり、動物も痛みも訴える仕草もあったでしょうし、体重の減少もあるでしょう。念のためにレントゲンをとります。

骨は輪郭もはっきりしており、骨融解像や増殖像などの腫瘍を疑う印象はありません。

計画通り、まず患部の切開をして新鮮創にします。

 口腔と鼻腔の境界にメスで切開します。次に骨膜剥離子で、丁寧に剥離をします。

 これだけ大きな穴だと、まず寄る事はないので、骨膜の切開をします。写真ではちょっとわかりにくいですが・・・。

 ある程度の出血は避けられません。

 写真はすでに縫合が終わっているものですが、その前に、口蓋も剥離をし、さらに口蓋の正中の切開と、正中から患部に向かって骨膜剥離子で剥離をし、より縫合部にテンションがかからないようにしておきます。正中の創面はそのままで、肉芽による治癒を待ちます。

反対側の奥歯は重度の歯周病になっていたので、外科的抜歯をしました。上下の残っている犬歯は、セメント質が見えているものの、歯周ポケットは1mmだったので綺麗に清掃・研磨をして残す事としました。

以上です。

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と思っていましたが、そうは問屋が卸しませんでした。

都合3回オペをし、ようやく昨日退院となりました。

1回目のオペの3−4日後、飼い主さんからどうも開いているようだとの連絡をいただきました。

再度来院してもらい、オペをして、経過観察をするために入院してもらいました。

犬と違って、猫の組織は柔らかく、薄いですね。

2回目のオペの3-4日後には、またしても4mmくらい開いているように見えました。

こうなると最終手段を取るしかありません。

 口蓋を完全に剥離し、口蓋裂の部分で、結紮し口蓋動静脈を切断します。

そして、頬側の粘膜を新鮮創にし、もう一度骨膜を剥がして切開した上で、粘膜下織と粘膜、それぞれで2創縫合をして閉創しました。口蓋骨が露出しますがそのままです。

5日後に、再度麻酔下で創面のチェックです。

 ふ〜、いい感じです。

口蓋骨も徐々に肉芽が埋めてきてくれています。

一通り飼い主さんに報告し、実際に写真を見ていただいてから、ひとまず退院してもらうことになりました。

ちょっと遠方の飼い主さんだったので、入院してもらい、経過観察もしっかりできました。

猫のこうした手術は、難しですね。犬歯一本くらいのONFだったら大したことないんですが、なんて負け惜しみですね。何度もオペをすることになりましたが、飼い主さんのご理解もあり、なんとかここまでこぎつけました。猫ちゃんもよく頑張ってくれました。

お疲れ様でした。

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前回の経過観察から1週経ちました。

念のためにもう一度チェックします。

 赤い色の濃いところが新しい肉芽組織です。この1週でかなり増えました。

向かって左側、口唇のすぐ内側が縫合した部分で、以前口鼻瘻になっていたところです。

傷は開いていません。かなり良い状態です。

 ほんの少し、移植した口蓋粘膜を持ち上げてみました。大きく持ち上げる事はできませんが、やや隙間がある様にも見えますが、大きなスペースはありませんでした。赤い肉芽がどんどん増えて、うまくくっついてくれれば観察終了です。

次回は2週後にチェック予定です。

 
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