Case #039: 下顎第1後臼歯の破折 ヘミセクションをおこなった犬 |日野どうぶつ病院|1

blog

Case #039: 下顎第1後臼歯の破折 ヘミセクションをおこなった犬

今回の症例は10歳、避妊済雌のシュナウザーです。

右下顎第1後臼歯(409)の破折があるとの事で紹介され、来院されました。ジャーキーを与えていたが、急に食べなくなったとの事です。

縦にも割れているとの事で、それが根のどの辺まで及んでいるかが、残せるかどうかの鍵になると思われました。 

いままで上顎第4前臼歯の破折ばかりで、下顎第1後臼歯の破折ってあってもいいけど・・・、と思っていましたが、やっぱりおこるんですね。初めての下顎第1後臼歯の破折症例です。

 窩洞形成し、ファイルを入れているところですが、主咬頭の部分で破折しているのが分かりますね。グレーのファイルが#8でピンクのファイルが#6です。

レントゲンを見てみましょう。

 #6のファイルを入れているのが遠心根(向かって左側)になりますが、ファイルの先端が真ん中からそれているのが分かるでしょうか。2−3本のファイルをダメにしてしまったんですが、レントゲンも複数回撮って、条件もかえてみて・・・。一番綺麗にしなければならない根尖までファイルがうまく到達できなかったので、遠心根を残す事をあきらめました。

ちなみに反対側はこのような感じ。

 明らかに破折歯の方が根周囲の骨透過性が亢進しているのが分かりますね。(こちらは健常側なので、根周囲の状態は問題なしです。その他の部分も、初診の場合は必ず全顎のレントゲンをとり異常の有無をスクリーニングしなければなりません。)

ということで、

近心根のみ抜髄根充をし、歯冠の修復をしました。

 舌側からアプローチして修復部はこのような感じです。抜去した遠心根の部分の閉創とともに、歯冠切断した断面を遠心の歯肉でおおえるように予め切開してあります。

歯肉の付着は約束されたものではなく、飼主さんが歯磨きができるということが必須です。

このヘミセクションは歯科治療の2つの要素が含まれています。

1つは破折により起きた歯髄感染の治療という歯内疾患の治療。もう1つは、抜去し歯周外科を行ったのでその再付着を期待するという歯周外科。当院でできる事はキッチリと行いましたが、うまく行っているかどうかの判断はしばらくしてからのレントゲン検査によってのみ判断されます。

うまく行っていますように!

 

TOP