Case #086: 左下顎第1後臼歯のヘミセクションを行なった柴犬 |日野どうぶつ病院|1

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Case #086: 左下顎第1後臼歯のヘミセクションを行なった柴犬

年末にご挨拶をしましたが、年始のご挨拶もせずに今日は1月31日。あっという間に1ヶ月終わってしまいましたね!

1月は正月休みもあり、水日曜日・祝日はオペが入らないので、今月は17日しかオペができる日がありませんでした。その中で、歯科手術が11件で、整形手術が2件、避妊は猫がわずか1件だけでした。昨年から歯科手術が大半を占めるようになってきましたが、多くの方がインターネットで、当院が歯科に力を入れていることを調べてくださり、来院されました。歯科診療には1時間(でたいてい済まないのですが)をあて、飼い主さんがしっかりと納得されるよう細かい点もやりとりしています。歯科と整形外科は完全予約制で、3,000円特別診察料がかかりますが、お悩みの方、ぜひ一度ご相談ください。転院というより、歯科だけ当院で、予防やその他のことは今まで通りかかりつけでということでいいと思います。

さて、今回の症例は、左下顎第1後臼歯(左の下顎にある奥の方の一番大きな歯:309)にヘミセクションといって根管治療と歯周外科を組み合わせて、歯の保存を試みる治療を行なった柴犬のことを紹介します。

昨年、ネットで当院を見つけられ、気になっていたお口のチェックのために来られた柴犬ですが、そのとき、309の遠心根(尾側側の歯根)に重度の歯周病が見つかりました。
向かって左側の大きな根っこ(309遠心根)の周囲が、黒っぽくなっているのがわかりますね。通常、骨は白ですから、このように黒いのは骨が何らかの原因でなくなったからです。これは典型的に歯周病によるもので、このまま放置しておくと左側の根っこの周囲の骨もなくなり309を失うことになりかねません。下顎第1後臼歯と上顎第4前臼歯は別名:裂肉歯とよばれ、食肉動物にとっては大きな塊の肉を引き裂いて小さくし、飲みこむために最も重要な歯です。この柴犬には、向かって右側の小さな歯を抜歯し、昨年根っこの周りの汚れを取り除くルートプレーニングという治療を行いましたが、今回の経過観察では残念ながら改善していませんでした。

その際の治療オプションとして説明していたヘミセクションという治療をすることになりました。ヘミセクションとは、歯を分割し歯周病の歯根を抜去し、残った歯根の保存を試みて根管治療を施すというものです。根管治療は、必ず成功しますよといいきれる治療法ではないですが、当院ではかなり高い割合で、保存できています。

術中、術後の写真とレントゲン写真は、こんな感じです。

先端まできっちり詰め物が行き渡っているのがわかります。シーラーと呼ばれるペースト状のものにはMTA製剤であるバイオセラミックスという素材を使っており、より高い成功率を追求しています。抜去した遠心根の抜歯窩にはコンシールパテという骨補填材を詰めてあります。

半年毎で2年後までの、麻酔下でのレントゲンのチェックが必要ですが、この柴犬は比較的若く、優先順位の高い裂肉歯ですので、この飼い主さんがヘミセクションを選択してくださり良かったです。歯みがきを頑張っていきましょう!

当院では、こんな感じで専門性の高い治療を行なっています。

遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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