Case #002: 猫 交通事故 脛腓骨遠位端 粉砕 開放骨折 |日野どうぶつ病院|1

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Case #002: 猫 交通事故 脛腓骨遠位端 粉砕 開放骨折

 2−3年前の事ですが、保護された猫の大腿骨の粉砕骨折のオペのことを思い出しました。切皮し、筋膜を鈍性剥離して大腿骨にアプローチしたとたん、膿がでてきました。保護された猫なので、おそらく交通事故が原因だと思いますが、事故時、骨が一時皮膚を突き破って外に出て、汚染したものがまた中に引っ込んで感染が起きたのだと想像しています。その時は、髄内ピンを2本入れ、ケージレストをしてもらい、なんとか骨融合し治りました。治った要因はシンプルな固定だったというのもあると思います。

今回は、しかし、遠位骨片が小さ過ぎますし、骨折部分を被う軟部組織も僅かですので、髄内ピンだけではまず骨融合しないでしょう。偽関節になる可能性が高いです。そうだとしたら手術をする意味が薄れてしまいます。こういうケースでは、やはりサーキュラータイプの創外固定法がベストでしょう。サーキュラータイプの創外固定では、リニアタイプの創外固定よりも、固定用のピンが細いものを使えます。直径1mmを2本、垂直に交差する形で刺入し、円形(正確には馬蹄形)のリングにネジどめします。そこにロッドを固定し、そのロッドから近位骨に、リニアタイプで使うやや太めの固定ピンを2本刺入し固定します。予め入れておいた髄内ピンもタイ―インという形で、ロッドに固定をすることで抜けを防ぐ事ができます。

まず汚染創を徹底的に清掃します。小さな骨片も腐骨になる可能性が高いので除去します。出来る限り綺麗にした後、まず髄内ピンを入れ、近位骨片と遠位骨片のアライメントを整えます。次に遠位骨片に1mmのピンを入れます。一度入れましたが、術中レントゲンでやや斜めに入っていたのを確認したので、入れなおしました。2回目は、2本が骨の軸にほぼ垂直に入りました。それをしっかりと馬蹄形のリングに固定をし、ロッドを取り付けます。その際、じっくりと時間をかけて、より理想的な角度、位置に持っていき、次に2本のピンを近位骨に入れ、固定します。足根関節の動きだけでなく、患肢を動かした時に1つの面を描くように動くのがうまく固定できている証拠です。

閉創前に、Consilという骨誘導能のある活性ガラスという素材を骨折部位におきます。歯科用に米国から取り寄せたものですが、同一名でオルソ用(整形用)も出ているので、問題ないでしょう。Consilの利点は、感染巣でも使える点が大きいです。自家骨では感染に抵抗できない可能性があります。

次に、キチンフェルトをおきます。Consilをのせる前に、皮膚形成をしましたが、完全に被いきれない可能性がありました。上皮化を促すのとConsilをとどめておくために、キチンフェルトをおき、最後に皮膚をナイロン糸で縫合しました。

大変でしたが、予定通りの手術を無事終える事ができました。

 

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