Case #005: 猫 脛骨近位成長板の骨折 サルターハリスI型 |日野どうぶつ病院|1

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Case #005: 猫 脛骨近位成長板の骨折 サルターハリスI型

3/17(土)夜の診察終わり頃に、骨折の猫が来院しました。2日前に2階から落下したとの事。8ヶ月齢去勢済の日本猫mix BW3.30kgです。

左脛骨近位成長板の骨折サルターハリスI型です。粗面も同様の骨折を起こしています。この部位の骨折は2回目で、以前は成長期のブルドッグで交通事故によるものでした。猫で大腿骨遠位端の骨折は割と良く見ますが、この部位は珍しい方だと思います。

一般的に骨折を整復後、3本のキルシュナーワイヤーを刺入して固定をします。大腿骨遠位端でもそうですが、尾側に引っ張られていますので、この整復がやっかいです。整復時、成長板の細胞の損傷を最小限にしなければなりませんが、骨を用手または骨鉗子で保持しての整復というのは至難の業です。整復で来たとしてもそれをキルシュナーワイヤーで固定するまで適切に保持する事も難しいです。私の場合は歯科用のエレベーターを使い、テコの原理で整復し保持します。経験的に、これが最小限の損傷だと思っていますが・・・。

その後粗面の中央にキルシュナーワイヤーを刺入し、脛骨に向かって刺入し固定します。何度も何度もレントゲンを撮り、チェックしながら行います。次に、内側から入れますが、これも関節面に入れないようにしつつ、できるだけ骨量が多い部分を刺入し、脛骨に固定します。最後に外側から、同様に近位骨片の関節面付近から入れ、脛骨に刺入し固定します。この際、全脛骨近がある脛骨外側面に滑っていかないように、やや垂直に近づけてキルシュナーワイヤーを打ち込みます。これはまるで、前十字靭帯断裂の関節外法のT3ポイントに近い事で、なかなか難しいです。

 なんとか3本のキルシュナーワイヤーを入れ、整復固定を終えました。実際にはいったん刺入し固定して、膝関節の屈伸運動をした際、やや動きがぎこちない感じがあったので最初からやり直したり・・・。前後方向とラテラル像における、オペのビフォーアフターレントゲンだけをお見せしてもその苦労というのは分って頂けないと思いますが、この2枚の間に実に60枚以上のレントゲンを撮っています。当院には立派なC-armはありませんが、歯科用レントゲンとデジタルレントゲンがあるおかげで可能な事でした。フィルム時代は100枚入り1箱でしたら、この1回のオペで2/3箱使ってしまった事になります。

翌朝この猫のお世話をした際、軽く患肢をついて歩いてくれていました。オペ3日後に、ひとまず退院しましたが、しっかりとケージレストができるように適切な大きさのケージを貸し出しして、お世話をしてもらう事にしました。若いので、うまく管理できれば1ヶ月後には骨融合が確認でき、インプラントの除去手術もできると考えています。

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ope後、約2ヶ月でのレントゲンでは、まだ粗面と脛骨との融合が十分とは思えませんでした。順調にはきていたので、ope後3ヶ月なら大丈夫だろうということで前回予約を入れておいて頂き、処置をしました。足を少し伸ばして座ったりするという症状がのこっています。

抜ピン後のレントゲンは以下となっています。

 やや高い位置に粗面がありますが・・・。左右同じように膝関節を曲げた状態で、膝蓋骨の位置に大きな差は無いので、問題ないと思います。

術後の様子伺いの電話では、以前伸ばすことが多かったが、曲げられるようになったとのことでした。粗面の固定の為のピンが関節内にあり、そのせいで違和感があったのかもしれません。また、両側のピンの骨からでている部分を、もう少し短く切った方が良かったかも。

 

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