Case #049: 犬の吸収病巣 |日野どうぶつ病院|1

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Case #049: 犬の吸収病巣

今回の症例は犬の吸収病巣です。犬で、歯周病や歯内病変に関わる炎症性の根吸収や置換性吸収、内部吸収は非常によく見ますが、いわゆる猫の吸収病巣(TR)と同タイプの歯頸部に発生する吸収病巣は、あんまり見ることはないです。今回は、さらに下顎第1後臼歯(309)なので、通常、上顎第4前臼歯が被っているわけで、非常に見つけにくいところです。これは飼い主さんが発見したもので、歯磨き時の出血や頭をそむける(おそらく痛みを感じて)という動作があるので、これはおかしいということで、ネットで探して当院に来院して下さいました。オーラルケアができるということは、早期に病気を発見できるという点からも、素晴らしいことです。

 では、患部を見てみましょう。

 わかりますか?向かって右側が下顎。その一番尾側に見える大きな歯が左下顎第1後臼歯(309)です。赤色の部分がありますが、ここが問題の部分です。なんでもそうですが、知っていればすぐわかりますが、知らなければなんだかよくわからないということです。

レントゲンを撮るとこんな感じです。

 明らかに歯冠の部分で歯質が欠損しているのがわかりますね。このような透過性の亢進を見逃さないようにしなければなりません。今回は頬側に病巣がありますが、舌側にできることもあります。以前、猫で、口腔内検査で見逃してしまったのですが、レントゲンで舌側にあった吸収病巣を発見できたことがあります。

 骨膜剥離子でめくりますとこんな感じですが、歯肉からの出血でちょっとわかりづらいですね。

 歯肉側でこの軟部組織を切除し、さらに、309を外科的抜歯するために歯肉に縦切開を加えて、フラップを作成します。虫食いのようになっていますが、わかりますよね。ここが、破歯細胞によって食われてしまった欠損部です。

 少し骨を切削します。

 309は2根ですので、歯冠分割しないと抜歯はできません。でも、今回は、分割するとこの欠損部をいためてしまいます。飼い主さんにこのままの形でお見せしたかったので、今回は、歯根の部分で切断することにしました。

 さらに骨を切削し、根を露出します。小型犬ですので、下顎管内の下歯槽動静脈神経を傷つけないようにかなり細心の注意を払って実行します。

 無事に脱臼できました。

 黒っぽい帯状の部分が下顎管で、この中に動静脈神経があります。近心根はかぎ状に曲がっていますが、小型犬ではよく見られます。皮質骨に当たるので、根が曲がって形成されてしまうんですね。ちょっとしたテクニックがいるかな。

頬側 

 舌側

4-0Monocrylで単純結紮縫合にて閉創しました。

無難に治療できていると思います。309は裂肉歯ですので、大切な歯を失うことになりましたが、歯肉は1週間もすればきれいにくっついて、痛みのない生活に戻ります。これからも頑張って歯磨きを続けていきたいですね。

猫の場合、吸収病巣の治療として、根がアンキローシスを起こしている場合は歯冠切断と歯肉粘膜の縫合となっています。本例のように構造が残っている場合は抜歯です。専門医の先生は、歯質の欠損により歯髄の露出が起き、痛みを生ずると言っていました。もう少し突っ込んで質問すべきでしたが、それ以前に、この炎症を起こしている軟部組織そのものがかなり痛いんじゃないかと考えています。歯の抜去も大切ですが、軟部組織を早く取り除いてあげることが大事じゃないかと思っています。個人的な見解です。

 
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