Case #004: 犬 下顎骨骨折 けんか?

March 3, 2018

 オペ日(2018/02/27)

不思議と症例ってかたまって来院するもので、今回は犬で下顎骨の骨折がきました。紹介元の病院に受傷後2日ほどで来院したようだったが、当院に来たのは受傷後5日目でした。6ヶ月、雌の豆シバで、犬に噛まれたとの事。以前来た下顎骨骨折のプードルも同居犬とのけんかが原因だったかな。

下顎骨折続きとなったが、マズル(口輪)だけでも何とかなるのか、以前のような歯間ワイヤリングや、前回(猫)のようにプレートとスクリューでの固定が必要なのか。いくつかのオプションを考えつつレントゲンを撮ると・・・。

 左下顎第1後臼歯遠心根の部分で単純骨折している。また、第2後臼歯は欠歯だった。歯根が1本なので、あるのは第3後臼歯かな。いずれにしてもこの小さな歯と第1後臼歯をワイヤリングする事だけでは固定力は弱いと思う。小さな歯がすっぽ抜けてしまう事もあり得る。。。ワイヤリングとレジン固定は必須と思われた。

 まず口を開けて歯間ワイヤリングに取りかかったが、小さい動物の口の奥の方は処置がしづらい・・・。とめたつもりでもワイヤーがすっぽ抜けてしまう。扱いやすい少し細い24Gワイヤーでやり直しても元の木阿弥。こちらだけでは強固な固定はできないのだと理解し、下顎骨腹側との2カ所の固定法を行う事にした。

下顎骨腹側からアプローチし、ポイント骨鉗子で、骨折端をあわせてみるとほぼピッタリ。

 キルシュナーワイヤーで2カ所下穴を開け、ワイヤーを通して、8の字で固定をした。

改めて、歯間ワイヤリングを行ったところ、ぴったり骨折端は一致している。第3後臼歯(小さい歯)は、やや近心の歯根膜腔が狭くなっているようにみえる。

 次に舌側にレジンを盛るために、エッチング、ボンディング剤塗布。

歯科用化学重合レジンを盛る、表面のごつごつを無くすように表面を削った。気管チューブを入れているので、正確には咬合評価はできないが、下顎第1後臼歯と上顎第4前臼歯の間には割とスペースがある事を確認したので、頬側にもレジンを盛る事にした。

 想定より時間がかかったがレントゲン的には出来は悪くない。1ヶ月もてば骨融合に導けるはず。若いので骨融合はスムーズだと思うが、若干不安なので、マズルは骨融合までつけていきたい。骨融合を認めたら、レジンと口腔内のワイヤーは外す。

 

合併症がおこるとしたら、骨折ラインが第1後臼歯の遠心根の根尖〜歯根膜を含んでいる事により、最悪は歯髄への血流阻害による歯髄壊死がおこるかもしれない。その場合は、抜髄根充をして、保存できる可能性はある。あとは骨性癒着(アンキローシス)がおこる可能性がある。固定を外す時点ではっきりしていればいいが、経過は要注意で観察していきたい。

 

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経過観察(2018/05/19)

食欲元気あり、フードも音を立てて咬んで食べているとのことだった。

1ヶ月ほど前にも一般レントゲンで、無麻酔下で撮ってみたが、まだ融合しているようには見えなかった。今回は良さそうだったので、麻酔下での検査をし、もし問題なければ固定を外すということで預かった。

 

 頬側面。レジンと歯肉の境界に汚れと歯肉炎が見られる。

 舌側面。固定はとれていない。

骨折ラインは消失しており、骨融合が確認されたので、固定剤のレジンとサークラージワイヤーを除去した。レジンを取り除くのは毎回苦労する。抜歯鉗子を使ったり、歯を削らないようにダイヤモンドバーで削ったり、スケーラーを用いたり。歯を破損しないように地道にコツコツ行うしかない。

 なんとか無事に取り除くことができた。

 下顎骨腹側のワイヤーは、基本的には除去の必要性はない。触診でも動物は違和感や痛みを示すことはなかったので、このままとする。

 ここで、健常側(右側)の下顎後臼歯部のレントゲンを撮影し、患側(左側)と比較検討した。

患側は軽度の水平性骨吸収を認めた。第1後臼歯と第3後臼歯は、患側の方がやや象牙質が薄いように見える。第4前臼歯は差が無いように見える。

 

 

 

 

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