Case #012: 犬 歯周病の309のヘミセクション

May 10, 2018

今日の歯科処置は、8歳、雌のMシュナウザー、BW6.80kgでした。

知人の動物病院からの紹介で、下顎両側犬歯が重度の歯周病になっているとのことでした。

飼主さんとよく話をしてみるとオーラルケアの重要性についてよく知らなかったとのことで、前回その知人の動物病院で重度の歯周病になっていることを知り、シュナちゃんに深く申し訳ないと思っているとのことでした。歯を失うこともショックでしたが、抜歯後に舌ベロが出るようになるのではということも心配されていました。

 

飼主さんと希望:できるだけ歯は抜いて欲しくないとのこと。

オーラルケアの可否:歯磨きはできるがやっていなかっただけなので、頑張ってやると涙ながらに約束されました。

 

検査内容と治療計画:

通常通り、挿管後、麻酔下にて口腔内検査とレントゲン検査を実施しました。

 

下顎両側犬歯(304, 404)は、歯周ポケットは深いところは10mm以上あり、レントゲンで骨吸収は重度でした。この2本はあまりに重度ですので、術後舌が出てしまうかもしれませんが、抜くべきです。

 

 

 

左下顎第1後臼歯(309)遠心根は重度の垂直および水平骨吸収があり、近心根は根尖周囲病巣を認めました。この根尖周囲病巣は、おそらく遠心根の辺縁性歯周病由来の歯髄感染から来ていると思われました。上顎右側第4前臼歯(108)は前回の治療で抜歯されており、右側でフードを咬むことはできませんので、309を残せるかどうかは非常に重要です。上顎左側第4前臼歯(208)の歯周組織は問題がないことがプロービングとレントゲンで分かりました。309を残すにはヘミセクションという治療により近心根と一部の歯冠を温存できる可能性があります。

 

治療:

まず、304と404を抜歯し、次に309のヘミセクションを行います。

304の抜歯は割と簡単に済みましたが、犬歯の歯根は大きいので抜歯窩が大きく、そのぶんこの下顎骨先端部の強度の不足が懸念されます。できるだけ骨の再生を促すため、骨補填剤を入れることにしました。

まず歯肉を切開、剥離しますが、第2前臼歯の根尖付近には中オトガイ孔が開いており、血管と神経が外側に出ていますから、損傷しないよう注意します。

ダイヤモンドバーで不良肉芽や汚染物質をできるだけ取り除き、新鮮創にして出血させます。

 Consil(骨補填剤)を入れます。

 4-0Monocrylで単純結紮縫合にて閉創します。

 向かって右側の黒っぽいところが304の抜歯窩です。

304の抜歯窩にConsilを詰めた状態。

 

次に309も含め、残る歯は全て歯石除去〜研磨を行い309のヘミセクションの準備をします。

 開拡、抜髄し、#6のKファイルを近心根根管に入れたところ

 #40のKファイルを入れたところ。#45まで入れました。

分りにくいですが、洗浄、乾燥後、水酸化カルシウムペーストを入れ、ガッタパーチャを詰め、グラスアイオノマーにて裏層後、コンポジットレジンを充填。切断面も綺麗にして、同様に閉鎖しました。

 根尖から少しCaOHが漏れていますが・・・。

近心根抜歯窩は、より丁寧に不良肉芽を取り除いたのち、Consilを詰めます。

歯肉粘膜フラップを作成し、4-0Monocrylにて近心根から歯肉が離れないように結紮固定し、歯肉は単純結紮縫合にて閉創します。

 

術後は、2週後に来院してもらい、それから309の歯磨きを開始してもらいます。

経過観察で見てゆくところは、定期的に麻酔下でレントゲンを撮り、近心根根尖周囲の骨透過部位がなくなってゆくかどうか。歯冠の切断面に歯肉がくっついてくれているかをプロービングとレントゲンでチェックすること。この2点に注意してみていきます。

 

まとめ:

上顎第4前臼歯と下顎第1後臼歯は、肉食動物では裂肉歯といって、特にペットとしての犬猫では最も大切な機能歯です。今回は、ヘミセクションという治療により下顎第1後臼歯を部分的に残す試みをしました。この歯が残していけるよう、頑張って歯磨きをしてもらい、また病院では定期的な清掃とチェックを頑張って続けていきたいと思っています。

 

 

 

 

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