Case #069: 尾側口内炎の猫ちゃん。遠方より来院。Gingivostomatitis (caudal stomatitis) in a cat

January 23, 2020

尾側口内炎の猫ちゃんです。

1年ほど前から口内炎があったとのことでした。内科的治療で思わしくなく、非常に強い痛みがあり、食べたいけど食べられない状態らしいです。

早くオペをしてあげたかったのですが、年末にオペをして経過が思わしくない場合に色々と対応が難しいので、年明けまで待ってもらいました。

術前の血液検査では、FeLV抗原検査(陽性)、軽度WBC増多が見られました。

術前の飼い主さんとのやり取りで、術後の投薬が心配とのことでした。投薬の際、非常に痛がって、投薬が困難だとのことでした。(レントゲンファイルなど一部アップロードができていません。原因不明)

 

麻酔下での口腔内写真になりますが、このような状態。

口の周りに黒い汚れが付着しています。口の中の出血によるものと疑います。

上顎犬歯の歯根膨隆に血液が付着していますが、これは特に何をしたわけでもなく、自然出血によるものです。口内炎でもいわゆる口峡部だけに強い炎症があるもの。また犬歯の辺りまで及んでいるものもいますが、個人的にはここまで来ている場合は、全臼歯抜歯でなく全顎抜歯を飼い主さんにはおすすめしています。

 

 正面から見て、切歯の歯肉も炎症が起きているのがわかります。

 

尾側(いわゆる口峡部)も非常に強い炎症、ただれ、自然出血が見られます。(見にくいかもしれませんが・・・) 

 

プロービングでは、309以外は深くて2mm。309に吸収病巣を認めました。

 

 レントゲンで確認しても、歯周炎はなさそうです。309の歯頸部に透過性の亢進が見られます。

 

報告では、外科手術後8割が寛解に導かれるものの、2割は反応が悪いとなっていますので、飼い主さんにはその点をご理解いただかなくてはなりません。

 歯肉を切開・剥離し、歯槽骨を切削、歯冠分割後、脱臼させます。

 

 骨棘を切削し、平坦にし、骨膜を切開し、テンションのかからない状態にしたのち、4-0Monocrylにて単純結紮縫合にて閉創します。

 

 右下顎も同様に、

 

 犬歯も完全に脱臼します。年齢が若いので比較的抜歯しやすいですが、猫の歯根はガラスのように固く、もろい。FeLV陽性ということで残根は残したくありません。慎重に進めます。

 

 左上顎。

 

 左下顎も。切歯も含む全ての歯を抜歯しました。

 

最後に、術後にしっかりと栄養補給できるよう、また投薬時の飼い主さんの負担を減らすこともできるので、食道チューブを設置しました。

 使用したのは、トップの栄養カテーテル12Frです。成書ではもう少し太目のものが書かれていますが、3kgとやや小柄な猫ちゃんなので、少し細めをチョイスしました。レントゲンを撮り、食道内に無理なく収まる長さにカットし、先端に横穴も開けて食事の閉塞が起きないようにします。

この太さのカテでも、a/d2に対し、水1の量で混ぜたもので、40mlくらいの量が5分程度で給餌できます。このカテはキャップも標準で付属しているので扱いやすいです。

 

以前は簡単なので鼻カテで済ませていましたが、食道カテの方が圧倒的に給餌が楽だし、猫ちゃんも違和感を感じにくいだろうということで、食道カテを積極的に行うようになりました。

 

術後のレントゲンです。


疼痛管理は、術中にマーカインの局麻とフェンタニルとケタミンのCRI。術後も同CRIを継続しました。また、術後エリザベスカラーを装着しました。

 

手術後は、よだれも多く、時折痛がって泣いていましたので、メタカムをやや容量を減らして皮下投与しました。飼い主さんは遠方からの来院でしたが、かなり痛がっていたので、しばらく預からせてもらった方が良さそうだということで入院の許可を得て3-4日預かりました。

 

退院後は、時折電話確認させてもらい、状態は落ち着いているとのことでした。

 

1日も早く、痛みのない生活になってもらいたいです。口の痛みがあまりに強い場合、犬や猫も性格が悪くなってくることがあります。同居の動物との仲が悪かったのが、治療後痛みが減り、性格も穏やかになって仲良く暮らせるようになったと教えてくださった飼い主さんが見えます。

 

この尾側口内炎は、原則外科疾患です。外科手術までの待機期間に止むを得ず、短期間ステロイドを投与するのは仕方ないですが、歯がなくなるのがかわいそうなどという理由で内科を選んでいても良い結果には結びつかないでしょう。まずは抜歯をきっちりと行い、それでも改善が見られない場合に、内科的管理を模索するしかありません。

 

 

 

〜〜〜その後〜〜〜

数日前、ご依頼病院さんに行き、直接院長先生とお話ししてきましたが、よく食べ、ふっくらして、毛艶もよくなっていましたと、笑顔でお話ししてくださいました。

そして今日、術後約1ヶ月の食事の様子を動画で送ってくださいました。全ての歯を抜歯しましたが、うまく食べてくれていますね。あぁよかったと、私も一安心です。

 After one month postoperatively, the patient looks eating very well and comfortably without any pain.

 

 

 

 

 

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