Case #032: 15歳のラブラドール、口唇にできた腫瘍
2018.11.24 口腔外科
顎の下(喉元)にも腫れがありますが、下顎リンパ節が腫れており、FNAではリンパ球以外の細胞がたくさん見られ、中には緑色の顆粒もあったので、おそらく口角部のただれは悪性腫瘍を強く疑われました。術前での3方向のレントゲンでは明らかな肺転移像はないので、一応ステージ3と分類しました。
(Operation H30.11.20: intact male, 15yo, Labrador retreiver. Stage 3 = LN FNA: suspected melanoma)
外から見るとこんな感じですが・・・、
めくって見るとかなり広い範囲に及んでいます。
注意深く視診と触診により、1cmのマージンをとって注射針で大体の切開ラインを設定します。
ある程度の出血は避けられません。大胆に鋭性に切開します。
切除を完了しました。
次にリンパ節廓清に移ります。
かなり大きいのが分かりますか?
口腔粘膜側を単純結紮縫合にて閉創し、さらに連続縫合にて念入りに組織を寄せます。
最後に皮膚をナイロン糸で単純結節縫合にて閉創し、
口を大きく開けることで、創面が裂開しないように、 ボタンにて留めます。
手術は4時間半以上に及びましたが、高齢にもかかわらず頑張って乗り越えてくれました。
プロポフォールで導入、酸素とイソフルランで維持。術中輸液をしつつ、やや高窒素血症だったので、ドパミンを3μg/kg/hrで流し、フェンタニルとケタミンのCRIを行いました。手術当日少しふらつきつつも帰宅しました。
2日後に来院してくれましたが、食欲元気ありで、口元は痛がらなくなったとのことで、ホッとしました。私の手もペロペロなめてくれました。
病理検査の結果により術後の治療を検討したいと思っています。
お疲れまでした!
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Pathology: Melanoma margin clear, LN: Melanoma (by Histo Vet inc in Japan)
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このオペから丁度1ヶ月後の今日(H30.12.20)、全身麻酔下でボタンと犬歯、ナイロン糸の除去と、口腔粘膜の状態を観察しました。
(one month has passed)
元気食欲旺盛で、体重はやや減ったものの、全身状態は良い状態でした。
(2 button were broken)
4つあったボタンは1個半になりました。今日までに、顔をかゆがる、オペした側の喉元が腫れている、ボタンが取れたなどの相談を頂きましたが、そんなに大変な問題ではありませんでした。
体位を変えて、オペをした側の状況を見ると・・・、
Oral mucosa healed beautifully. No swell around surgical site with palpation.
綺麗にくっついています!
指でじっくりと縫合した部分や、元の口角の部分も触診してみましたが、明らかな局所再発はありませんでした。
最もテンションのかかっていたところは化膿していましたが、原因であるボタンや絹糸は除去しましたから、急速に治癒するでしょう。
Maybe there are metastasis at posterior lung lobe.
少し咳がみられたため、念のためレントゲンをとりました。ちょっと気になる影はありましたが・・・。
この手術の目的は、疼痛からくるQOLの低下(ひどい口臭、血液が混じる流涎、食欲不振、顎顔面患側を触るとおこり時に噛みついてくる。)をできる限り取り除くという事でした。術後の合併症はわずかにありましたが、食欲元気は改善し、何より疼痛は無くなりました。来院の度に、頭をなでもらいに私の方に来てくれるほどになりました。病理検査の結果はメラノーマとの事で悪性腫瘍でしたが、ただ痛みに耐えるだけの生活から、このワンちゃんらしい生活は取り戻す事ができました。手術にもよく耐え、術後エリザベスカラーをし、口を広げすぎないようにする糸とボタンなど不自由にも1ヶ月頑張ってくれました。お疲れさま!
飼主さんも大変満足されており、苦労しましたがやって良かったなと思っています。抗がん治療の開始することになり、一日でも元気で長生きしてもらいたいです。
We will start chemotherapy ( Palladia 50mg, 1t, three times a week ).
Hope it will work well!!
Thank you for many suggestions, Dr. Maria.