Case #066: CBLOで治療をした前十字靭帯断裂のBW3.40kgのチワワ
2019.11.29 整形外科
出張でオペをするのはメリット・デメリットあるが、経験を積ませていただくためにも、頑張らねばと思い引き受けている。様々な状況を考慮して入念に準備して臨まなければならないし、スタッフの方にも気を使う。100km以上離れていることもあり、忘れた場合にちょっと取りに戻るわけにもいかないし。
話はそれるが、TPLOやCBLOといったコツ切り矯正をするためには、欠かせない道具がある。それは、コツを扇型に切るためのエンジンのアタッチメントとソー(ノコ刄)だ。エンジンはまだ日本に正式な代理店はないが、一度デモをさせてもらう機会があり、非常に良い印象を受けた。骨折治療の際、ドリルで下穴を開けるのにも使うが、日本は対象が小さいので、軽量コンパクトに越したことはない。しかし、この手のものはバランスも大事で、手でグリップをつかんだ際、しっかりと手の中に重心が来るように作られていることが非常に大事だというのが個人的な見解だ。一通りのアタッチメントをつけ、当院にあるボーンモデルに穴を開けたり、切ったりしたが、本当に使い勝手が良かったので、購入するならこれだなと決めた。注文の際、一緒にソーも購入したのだが、どのサイズを購入すべきかと思案したが、結局8, 10, 12, 15, 18, 21, 24, 27, 30mmのすべてのソーを注文した。ただし、現在最も使っているのが8mmの一番小さいソーで、正直御守り代りぐらいの気持ちで購入したのだが皮肉なものですね。
エンジンにバッテリーケースとTPLO用アタッチメント、8mmのソーを取り付けた状態。全体のオートクレーブによる滅菌が可能。バッテリー本体は滅菌せず、ケースを滅菌して、バッテリーを中に入れて使用。バッテリーは2個購入した。バッテリーそのものを滅菌してエンジンに装着するタイプも販売されている。
左が8mm。右が12mmで、これは来週おこなう柴犬に使うことになっている。8mmはもう少し幅が小さい方が使い勝手が良い印象。
当院で導入するにあたって、2年ほど前から前十字靭帯の実習を受け始めた。ボーンモデルを使ったラボに2回、死体を使ったウェットラボ(アンカー式のラテラルスーチャー法、TPLO法とCBLO法とTTA法のコツ切り術)に2回参加した。すべての実習はちょっと大きめの体格のもので行われたのだが、現場では3kg前後ばかりなので、様々な面で制約が多く、困難な症例ばかりだ。骨折治療でもそうだが、扱うコツが小さくなればなるほど難易度は高くなる。
小型犬ではパテラの脱臼の併発症例も多いので、今回はTPLOではなく、CBLOという方法で前十字靭帯断裂に対処した。
オペ前TPAが35度、オペ後は6度。関節炎のため、コツ棘ができており正確な測定は難しいのだが、少し回転が大きかったかもしれない。ただ、足の向きによって角度は若干変わってしまうので、オペ後の経過を注意してみていきたい。
パテラの治療も同時に行おうと思ったのだが、そこまでのオペ時間がかかってしまった上に、エンジンに取り付けるオシレートソーのアタッチメントが動作しなかったため、別の機会に実施することになった。私は道具の手入れはスタッフに任せることはなく、怠り無くしているつもりだが、今回はエンジン一式を海外から直輸入したことが仇となってしまい、土壇場で使用できなかった。前十字とパテラのオペは分けてすべきだという論も言われているので悪い結果ではないが、一度で済ませるためにCBLOを選択したこともあり、少々悔やまれる結果となってしまった。
そうこうしているうちに、当院にも3.70kgのトイプードルの前十字靭帯断裂が診断された。コツ切り矯正術を勧めたが、果たしてオペされるかなぁ。。。
———
術後14日目に出張オペに行った病院から動画が送られてきた。
まずまずの脚の使い方をしていると思われる。