Case #014: 108のComplicated crown fracture(平板破折、露髄あり)の犬 腫瘤の組織採取も
2018.05.26 歯科
上顎左第4前臼歯(208)は、最近かかりつけで、同様に破折の治療のために抜歯をうけたとのことでした。ですので、この腫瘤が良性の場合で、かつ108に重い歯周病や根尖側への重度の破折がなければ、108の歯内治療を行い保存することで、ドライフードを噛み砕いて食べることを続けられます。もし、腫瘤が悪性の場合は、108も抜歯することになると思いますので、今日歯内治療をしても無駄になってしまいます。プロービングでは108の歯肉溝深さは1-2mmでしたので、歯周病はなく、破折は歯冠部に限られていました。レントゲンでは、3つの根尖全てに、骨透過性の亢進が見られましたので、これは露髄により歯髄が感染を起こし、壊死歯髄からの様々な因子が根尖周囲に悪影響を及ぼしていることになります。
ひとまず今日は、他の歯もプロービングをはじめとする口腔内検査と口内法による歯科レントゲン検査を行い、歯石除去と研磨を実施しました。他の異常所見は、上顎左第2切歯の破折と露髄を認めました。
覚醒状態の身体検査では見つからなかった202のcomplicated crown fracture。
107と108の歯間、口蓋側の腫瘤を部分切除し組織検査に。
108はcomplicated crown fractureを起こしていたが、歯周組織は健全で、破折も歯根へ波及していなかった。
真横から2等分面法で撮影してみると、近心頬側根と口蓋根が重なっていますが、遠心根も含め2本とも根尖周囲の骨透過性が亢進しているように見えます。
レントゲン装置を尾側へ移動し、角度を変えてとってみても、108の3根の根尖周囲の骨透過性は亢進して見えます。
202(切歯の、向かって右から2本目)の歯冠部分の中央が、透過性の亢進が見られます。根尖周囲の骨透過性が亢進して見えますが、102の周囲も・・・。微妙ですね。正直。
ちなみに103と203の根尖周囲の骨透過性が亢進して見えると言われるかもしれませんがこれは正常所見です。Atlas of Dental Radiography in Dogs and Catsでは、Chevron lucencyと記載され、正常の構造となっています。上顎犬歯の根尖の方が目立って、このような構造があります。
組織生検のために、107と108の歯冠の口蓋側にあった、米粒大の腫瘤を部分切除し、病理検査に出しました。この腫瘤が悪性でなければ、108を歯内治療にて保存し、裂肉歯を片側に温存できる可能性を期待できます。病理結果の報告が来たとろこで、飼主さんと検討します。
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病理結果:線維性過形成
病理結果が悪性でなかったので、飼主さんと108を残す治療をすることにしました。歯内治療(抜髄根充)を来月実施予定です。