Case #019: 右上顎第4前臼歯の破折の犬
2018.06.21 歯科
上顎の奥から2番目の歯ですが、先っちょの方に赤い点があります。歯髄が露出しています。また、一部の歯の破片も残っています。
患歯のレントゲンです。まだそんなに時間は経っていませんので、根尖周囲病巣は見られません。でも、感染は通常起きてしまっています。
残りの破片を取り除くとこんな感じで、そんなに根尖側に深く破折が及んでいないことが分かりました。
近心と遠心に1つずつ穴をあけ、トランスコロナールアプローチにてファイルを書く根管に入れ、根長を測定します。
レントゲンをとるとこんな風に、細いファイルが各根管に入っているのが分かります。以前の症例では、近心口蓋根に入りませんでしたが、今回はしっかりとはいっています。
1本ずつ、こつこつと切削して詰め物ができる広さに仕上げます。108(や208)は、3根歯なので、手間はかかりますが、根の形態は割と素直にまっすぐなので、削ることは難しくはありません。
近心根は#45まで、
遠心根は#60まで広げました。
細い根管がかろうじて見えます。
キッチリ先まで届くガッタパーチャを入れます。一旦抜いたあと水酸化カルシウムペーストを充填し、再度ガッタパーチャを入れ、プラッガーなどで押し込んで何本かの細めのガッタパーチャをつめつめし、グラスアイオノマー、レジンを用いて修復して終了です。(細かいところは省いています)
仕上がりの状態です。
2方向からレントゲンをとり、問題がないことを確認して終了です。
少しずつ作業時間が短くなっているような気が毎回するのですが、今回も3時間でした。
歯内治療は時間がかかりますが、動物が帰宅する時は抜歯の時よりも元気に帰ってくれる印象です。犬や猫の抜歯は、歯周病でぼろぼろになっていない限り、ほとんどが外科的抜歯が必要です。人の親知らずを抜くのと同じ要領で、歯肉を剥がし、骨を削って、歯を取り除くのです。かなりダメージを与えてしまうという点もあり、歯の中の治療だけで済む歯内治療を行える場合は、その方が動物も楽だろうと感じています。