Case #020: 重度歯周病の犬
2018.06.21 歯科
年齢は14歳です。さすがに麻酔に注意が必要な年齢ですが、今回は、ブビバカインの局所麻酔以外にケタミンとフェンタニルのCRIも併用して疼痛管理を行いました。これは非常によく効いてくれて、術中の患者の状態は非常に安定していました。
覚醒状態での口腔内はこのような状態です。舌の色はもともとこういう色のようです。
触診では、左下顎骨に固着するような感じで皮膚に腫瘤が見られました。紹介元の病院さんでの抗生剤の投与でやや腫れが引いたとのことで、左下顎第1後臼歯(309)との関連が予想されます。
注射麻酔後挿管をし、右側の検査とレントゲンをしたあと、左側の検査です。
208の歯石がすごい大きさです。見る限り、けっ歯は7本あります。
309の歯根が大きく露出しています。写真では分りづらいですが、下顎骨はこの部分で大きく吸収されています。レントゲンでは・・・、
遠心根は歯根膜腔が消失しているようにも見え、アンキローシスか・・・、外部吸収か・・・、判断しづらいです。いずれにしてもこの状況では、治療がなければいつまでたってもこの歯は抜けることはないでしょう。
少しセンサーをずらしてとってみると、下顎骨の腹側に向かって黒っぽく骨透過性が亢進しているのが分かります。写真の腫瘤の元は、やはりこの瘻管を通って膿が排泄されているのだと思われます。
309歯冠を切断し、近心根を除去すると、その奥からチーズ様のプラークがでてきました。大変な状態です。
なんとか抜去できました。
他の部分もこのような感じでしたが、抜歯を済ませまして、
Monocryl 4-0にて単純結紮縫合にて閉創しました。
今日(6/21)術後2日目で電話にて様子伺いしたところ、食欲元気ありで、術前より良い表情をしているとの嬉しい報告を頂きました。
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術後6日目(6/25)に再診に来て下さいました。
笑っているような・・・
欲目ですかね(笑)
術創は非常に綺麗になってきています。
ん〜、またまたちょっとピンぼけしていますが・・・、顎の部分は、チョー綺麗!
たった6日ですよ!
今日は歯磨きの仕方を指導しました。
磨く歯の部位によっては下顎がチャタリング(顎が反射的に動く)が見られますが、お薬をつけながら磨いてもらい、悪いながらも下顎犬歯が長持ちするように頑張りたいです。
歯槽骨は歯の存在がなければ消失していってしまい、ひいては顎骨が退縮していってしまいます。苦渋の選択ではあります。