Case #026: 上腕骨遠位外顆の関節内骨折のチワワ
2018.11.10 骨折
骨折治療は、概して骨が小さければ小さいほど、困難になってゆきます。
小さいというのは、
(1)もともと小型犬で体が小さい、
(2)若いので小さい、
(3)骨の端っこで折れると骨片が小さい、
(4)交通事故のような大きな力(日本ではあまりありませんが、銃創なども)によって粉砕してしまい小さい、
(5)猫の骨は犬とはちょっと質が違い、粘りがないというかガラスのようなというか・・・、縦に亀裂が入っていたりして、骨片が小さくなり、整復困難なことが多いです。猫の歯もそうで、猫の抜歯をする時は、ガラスを扱うような気持で、丁寧に行うようにしています。
今回は、6ヶ月のチワワの上腕骨遠位外顆の関節内骨折ということで、上の(1)と(2)と(3)に該当します。該当する項目が多くなればなるほど難しいと思っています。
今回の骨折は、関節内骨折ということで、完全な解剖学的整復を目指すべき症例です。
レントゲンはこんな感じ。非常に小さいです。
一般的に成書に書いてあるのは、大抵その成書は欧米の専門医の先生が執筆されているので、対象は20とか30kgある日本でいえば大型犬(あっちでは中型犬)を対象とした手術法がのっています。ですので、そのまま日本で多い小型犬に落とし込もうと思っても、大抵無理です。
また、固定に使用するインプラントの強度というのは、どんどん小型化していったものの強度は、あるところから急激に弱くなるものです。
対象となる動物が2kgを切ってきますと、使用するインプラントが極端に弱くなってしまいます。非常に治療が困難です。特に年齢が若い1歳までの動物は骨が折れやすく、また、過度に動きたがる性格というのも、時に面倒です。
といっても、あるもので治すしかないので、スクリュー、ワッシャー、キルシュナーワイヤーでもって、骨折の整復固定を行いました。術中、固定ができない小さな骨片がでてきたので、解剖学的整復は困難と判断しました。多少の跛行は残るかもしれませんが、体重が軽いので、あまり症状にでなければと期待しています。
術後はケージレストを指示したものの、残念ながら従ってもらえませんでした。そのせいかはわかりませんが、術後10日過ぎた頃、患肢の跛行があるとのことで来院されました。柔らかいパッドをあてて、患肢を保護して2日後にチェックしました。しかし、効果のほどは感じられませんでした。パッドをつけたり外したりした際、足先を触られるのを極端に嫌った為、骨折部以外の問題の可能性を感じ、パッドは無しで、ケージレストを徹底してもうよう指示しました。さすがに今回は従うと約束していただきました。3日ほどして様子伺いをしたら、跛行はなくなってきたとのことでホッとしました。