Case #079: 猫の慢性口内炎(GS) 食道チューブの取り付け方
2020.06.17 歯科
今回の猫ちゃんは、一見、比較的軽めの口内炎ができているのですが、念のため食道チューブを設置し、給餌ならびに投薬をやりやすくすることになりました。
食道チューブの取り付け方のポイントを私なりに解説したいと思います。決して難しいものではないので、口腔外科だったり抗ガン治療の際の食欲低下を乗り越えさせるためにも是非行ってあげたい処置ですね。剃毛から始まり、チャイニーズフィンガーノットを終えられるまで、だいたい20分程度です。
患者は右側を下に、左側を上にして寝かせ、剃毛消毒をして術野を準備します。食道は左側にあるため、左上にして処置を行います。剃毛して、よく観察すると頸静脈の走行がわかります。
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どのあたりに頸静脈があるのかよく観察します。
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成書では、曲のペアン鉗子で、切開部位にふさわしい軟部組織の薄い部位を探すことが書かれていますが、それよりも実際に自分の左手の人差し指を入れて、触知するのをお勧めします。
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左手人差し指と親指で、軟部組織の薄いところを探してみましょう。頸静脈より背側にちょうど良い場所が見つかるはずです。
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そしてメスで切開しますが、この時、人差し指の腹の真上を体軸に平行に切開します。
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皮膚を切開し、
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次に曲のペアンを挿入し、切開部位を探します。モスキートで鈍性に剥離し、できるだけ軟部組織を薄くします。
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ペアンを少し開き、その間をメスで切開し、
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ペアンの先端を貫通させます。
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栄養チューブはトップのものを使っていますが、小さめの猫は12fr, 大きめの猫は14frを使っています。先端20-25cmほどを切って捨て、先端を丸くし、横穴を2箇所ほど作ります。
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ペアンで先を把持し、グリグリ捻りながらゆっくりと、一旦口の方に引っ張り出します。決して無理をしないように。近くに頸静脈が走っているので。
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ある程度引っ張ったところで、折り返して食道内に進めてゆきます。先端が、食道の尾側1/3に位置するところに位置するように、レントゲンを撮りチェックします。
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トップの栄養チューブは、キャップ付きなのが使い勝手が良いですね。
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2-0ナイロン糸をチューブの穴から尾側にかけます。チューブの向きが頭側寄りなので、それよりも尾側につける方がアンカーにしやすいです。縫合糸は、その中央で結紮します。
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皮膚側で一度結紮し、1cmぐらいのところでもう一つ結紮します。私は各4回結紮します。
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こちら側、向こうが、交互に結紮します。結紮は4回ずつ行います。チューブの湾曲を強くした方が、糸がしっかりと食い込みます。
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助手に、チューブを頭側から尾側、尾側から頭側へと交互に移動してもらいます。その際、結び昆布がきれいに並ぶよ、少しチューブをねじってもらったりすると良いです。
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交互に、それぞれ6箇所程度結紮をした後、糸を切って終了です。
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筒状包帯を首に設置し、使わないときはその中に収めています。また、エリザベスカラーは必須と思っています。糸は2-0では弱いと思われるかもしれませんが、強すぎたとしても、猫ちゃんがパニックになってしまいひっかくことがあれば、糸が切れなくて皮膚が切れるだけです。
強制給餌が必要な場合、合わせて投薬も簡単にできますし、胃瘻チューブのように早期に抜けたとしても合併症は起きにくいと感じています。
ぜひ、参考にされ猫ちゃんを飢えさせないよう、やってあげてください。